小型・軽量・高性能を誇るタクマー交換レンズ群
1973年頃のアサヒペンタックスカメラ総合カタログのレンズ部分です。
この頃は既にSMCタクマーとなっていましたが、個人的には前玉の大きなレトロフォーカスタイプの35mm広角レンズ、オートタクマー35mmF2.3やスーパータクマー35mmF2を好んで使っていた時期がありました。
さて、このカタログの表の最下段の2本が特殊レンズとしてウルトラアクロマチックタクマー85mmと300mmが載っています。
当時、このレンズには水晶や人口螢石といった高級素材を使い、赤外線域から紫外線域までの色補正がなされた物でした。その為、通常のレンズに見られる赤外フィルムを使った撮影での補正位置を示すマークもありません。また、紫外線透過フィルターを用いれば、紫外線撮影も可能でした。当時、UVニッコールの存在を知らず、このような色補正をした贅沢なレンズをニコンでも出して欲しかったと思ったものでした。
UVニッコールで思い出しましたが、タクマーレンズにもクォーツタクマーといった水晶を使ったレンズもありましたね。
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コメント
タクマーレンズ時代の細やかな仕様違いによるレンズの種類の多さも驚きですが、
他社に先駆けたようなクォーツタクマーやウルトラアクロマチックタクマーなど驚きのレンズも少なくありません。
接写用ベローズ併用の紫外線撮影専用のクォーツタクマー(Quartz-Takumar) 85mm F3.5は、人工結晶の水晶(溶融石英)と光学ガラスを使ったもので、波長200nm~400nmでの紫外域撮影を主体した特殊レンズでした。
1965年?に登場した工業用途のUV-Nikkor 55mm F4.0 Autoも同様に石英と光学レンズを使用した紫外線撮影用の特殊レンズではないかと思います。
1965年?に発売されたウルトラアクロマチックタクマー(Ultra-Achromatic-Takumar)85mm F4.5は、第1、4レンズに石英、第2、3、5レンズに人工結晶の蛍石(フッ化カルシウム)を使った5群5枚構成で、通常の光学ガラスは1枚も使っていない贅沢なレンズです。
紫外領域から可視光及び赤外領域の波長220nm~1,000nmの範囲を撮影可能なものです。
レンズの性格上コーティングはされていないようですが、完全自動絞りを有し、最短撮影距離も0.6mで、フィルター径も49mmと使いやすく万能的なレンズだったといえるでしょう。
専用フィルターのRフィルターや紫外線干渉フィルター使用で赤外線や紫外線域での撮影が可能でした。
各波長帯での色収差が非常に小さいのでピント合わせも可視光によって可能です。
紫外領域から赤外領域までの撮影が可能な同様のレンズに1985年9月発売の日本光学のAi UV-Nikkor 105mm F4.5Sがありましたが、このレンズも波長220nmの紫外から900nm近辺の赤外まで色収差が良好に補正されいて、紫外領域だけでなく赤外領域までの撮影が可能でした。
このUV-Nikkor 105mm F4.5は、6群6枚構成のレンズですが、蛍石と石英レンズ使用となっています。
1988年発売のAi UV-Nikkor 55mm F4Sも同様なレンズではないかと思います。
1968年?発売のウルトラアクロマチックタクマー(Ultra-Achromatic-Takumar)300mm F5.6も完全自動絞りですが、第1、4レンズに蛍石、第2、3、5レンズに光学レンズを使用した5群5枚構成で、最短撮影距離4.85m、フィルター径58mmです。
波長320nm~850nmに渡り色収差が補正されています。
いずれにしろ1969年発売のキヤノンのFL-F 300mm F5.6よりもずっと早く(1965~1968年)に旭光学は、人工結晶の蛍石を使用したレンズを市販していたわけです。
投稿: MARK12 | 2010年8月25日 (水) 20時33分
MARK12さん、いつも詳しい解説ありがとうございます。
これら特殊レンズ、特にウルトラアクロマチックタクマーなどは、コーティングもされておらず、光学ガラスとは違うデリケートな取り扱いをしなければならないといった作法もあったようで、一見万能なようで、急激な温度変化などにも弱かったですね。
投稿: MARU0 | 2010年8月25日 (水) 22時34分
以前タクマーにはまっており、ウルトラアクロマチックタクマー300mmを持っています。最近取り出してみたところ、極僅かにカビが生えていました。普通のレンズならば、カビ跡も残らず除去できそうな程度なのですが、メンテできるところは既に無いようで、お手上げです。特殊レンズはスペアの確保もしにくく、困りますね。
投稿: spotmaticianII | 2017年4月 9日 (日) 00時14分