ニコンFの電池
ニコンFはご存知のようにファインダーを交換することによりバッテリー使用の有無や数が違ってきます。
例えばニコンF(アイレベルやアクション、ウェストレベルファインダーの場合)は露出計を組み込まないのでバッテリーは要りませんが、外交式のフォトミックファインダーは水銀電池MR-9型(H-D型)を1つ使います。
また、その後のTTL式露出計内蔵のフォトミックT、フォトミックTn、フォトミックFTnはそれらを2つ使います。
ところで、その水銀電池ですが、使用説明書には時期により、メーカー毎の呼び名が違っていた為でしょうか代表的な銘柄を複数表示してありました。
以下がその例です。
東芝レイオバツクTH-NC 1.3V、東芝TH-MC 1.3V、ナショナルM-D 1.3V、同M-1D 1.3V、Mallory RX-13 1.3V、同RM-625 1.3V、同RM-630 1.3V、Eveready E-625 1.3V、GE No.625 1.3V、同HD625 1.3V、Ucar EPX 625 1.3V、Varta V625PX 1.3V
(実際はこのタイプの水銀電池は確か1.35Vといったような電圧であった筈ですが、取り説には終始1.3Vでの表示となっていました。)
これが1970年初め頃までの説明書(英語版含む)に列記されていましたが、その後は国産バッテリーに関してはH-D型で統一され、後にMR-9型と一般に呼ばれるタイプになりました。
MR-9型はJIS規格ということは聞いていますが、H-D型名称はどうなのでしょうね?また、このH-D型やH-B型といったボタン電池の統一した呼び名は説明書の変更時期の1970年後半くらいからなのでしょうか?
ご存知の方ご教示願えませんでしょうか?
画像は1970年2月(上)と8月(下)のフォトミックFTnファインダー説明書の水銀電池説明の部分です。
因みにニコマートFTnの説明書も比較してみましたが、やはり1970年後半からH-D型で統一してありました。
*:補足です、水銀電池は1995年頃から製造はされておりません、現在はアダプターや海外の同サイズのアルカリ電池(例 ファルタVarta V 625 1.5V)などを入手して使うのが一般的です、ただしアルカリ電池など電圧が異なる場合は露出の補正が必要ですし、電圧の降下による誤差も大きくなってきますので注意が必要です。
余談ですが、露出計を組み込んでない為バッテリーが不要と先ほど記しましたが、アイレベルとウェストレベルファインダーはニコンメーター類を追加できますね、その場合でもセレン光メーターですからやはりバッテリーは不要です。
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コメント
MARUOさん、こんばんは。
クォーツ腕時計等が一般化してボタン形の酸化銀電池やコイン形のリチウム電池が普及する頃から電池の型番が国際規格(IEC)として統一されるようになってきたという経緯があります。(IEC:International Electrotechnical Commission 国際電気標準会議)
それまでは製造メーカーが自社の基準で勝手に決める傾向がありました。昔からある電池で現在でも製造されているものの中には、国際規格がないものも少なくありません。
あるメーカーの電池が大きなシェアを得るとその規格(電池サイズ等)や品名(多くは記号+数字)がデファクトスタンダード化し、セカンドソース的な他メーカーは番号のみ流用し、記号を変えて品名だけで、どこの製品か判るようにしてきたと言えるでしょう。
公称電圧1.35Vの水銀電池で、カメラ等に多用された15.7mm径×6.1mm高のボタン電池のH-Dという型名は松下電池(National)が使っていた旧型名ですね。これはその後にJISやIEC規格でMR9となり、日本の松下や東芝ではMR9の型名を採用しました。
海外のメーカーでは、そのまま625の型番を使い続けたようです。
松下のH-DのHは、水銀の元素記号Hgの元でもあるラテン語の水銀のHydrargyrumから来ているのでしょう。2文字目の記号は電池サイズ(容量)でA,B,C,D・・・Uと付与していったようです。 H-Bは、11.6mm径×3.6mm高になりますが、JIS規格はないですね。海外電池では400番系でした。IEC規格としては一応MR08というのがあるようです。
JIS/IEC規格のMR9は、M:Mercury(水銀電池)、R:Round(円形)、9は、50番台まである電池サイズを示す数値(その後は3桁又は4桁でサイズ寸法を示す方式)のようです。
MR9相当の海外製電池としては、Eveready(Union Carbide/UCAR)のEPX625、Ray-O-VacのRPX625、VartaのV625PX、BerecのPX625などがありました。
MR9/625と同じサイズの公称電圧1.5Vのアルカリマンガン電池は、松下電池(National)のLR9(旧型名はAM-D)があったようです。JIS規格はなくIEC規格はLR9です。
海外製品では、VartaのV625Uのみだったようですが、V625Uは今のところ未だ入手可能なようですね。
投稿: MARK12 | 2009年9月10日 (木) 21時06分
MARK12さん、いつも詳しい解説ありがとうございます。
H-Dなどの型番は公的な規格による呼称ではなかったということですか。
しかし、70年の中ごろから一斉にニコンの説明書で扱い始めたということは、複数メーカーでの統一した呼称・基準(規格)のようなものの通達があったのかもしれませんね。
この時期の他カメラメーカーの説明書でも検証してみたいところですが、生憎、ニコンの物しか所持していないのが残念です。
投稿: MARU0 | 2009年9月11日 (金) 16時44分
MARUOさん、こんばんは。
私の前の書き込みですが、一部訂正があります。
水銀電池のH-Dなどの型名ですが、これはMR9などに変わる前のより古いJIS規格だったようです。この古い規格では、水銀電池の公称電圧が1.3Vという表現になっていたのかもしれませんね。
でも早期に新しい規格(IEC規格準拠?)に変わってしまったんですね。H-Dの型名は、松下と東芝以外にもあったんでしょうかね。
(JISの規格案を作るときに参加したであろう松下電池と東芝の共通案だったのかもしれません)
水銀電池は初期電圧と終末電圧の差がほとんどなく、非常にフラットな特性で電圧が安定していました。電池としての容量も大きかったわけで、電気的特性はよかったんですが、有害な水銀を使っているのがネックとなったんでしょうね。
水銀電池(筒形が多い)は、特殊用途(軍用等)に現在でも製造され使用されているようです(1970年代設計の機器などのメモリーデータ保持用途など)。
私もニコン以外の手持ちの取説の中から水銀電池を使っているものを一通り調べてみました。
以下は、原文に近い形で電池記述の部分を抜粋したものです。
◆印を付けたものにJIS規格という記述があります。
●Minolta SR-1s取説 No.713D
別売のSRメーターSの使用電池
水銀電池 ナショナルMD型、東芝TH-MC型
◆MINOLTA SR-T101取説 No.3C20A
水銀電池は、JIS記号 H-D型を使います。
●YASHICA MAT-124G取説 820602②
水銀電池1.3Vを使用します。
<使用可能電池>
国内 ナショナルH-D 東芝H-D
海外 マロリーPX-625,PX-13 エバレディE625N
●OLYMPUS M-1取説 I JM1 0273・10MS
水銀電池(H-D型1.3V)1個を使用。
*外国製品でH-D型1.3Vには、Mollory PM-625R,GE NO.625,Eveready E625などがあります。
●ASAHI PENTAX SP取説 7304
1.3V水銀電池 東芝製、またはナショナル製H-B型
米国製マロリーRM-400R、またはW2など
●KONIKA C35取説 306E65
1.3V水銀電池 ナショナルH-C、東芝HS-C、マロリーPX-675、エバレディーEPX-675など
◆Canon FTb取説 PUB.NO.0414K 1171D20
水銀電池は、JIS(日本工業規格)H-D型 1.3V 1コ使用。
米国製MALLORY・PX-625,EVEREADY・EPX-625に相当し、約1ヶ年の使用に耐えます。
●Canon F-1n取説 PUB.C.I.J.066E 0680D3.3
水銀電池はJIS(日本工業規格)M-R9型(H-D型)1.35V 1コ使用。
米国製MALLORY・PX-625,EVEREADY・EPX-625に相当し、約1ヶ年の使用に耐えます。
投稿: MARK12 | 2009年9月11日 (金) 22時43分