幻?のニッコール付き35ミリ判カメラ ケンコー35カメラ
以前にフォトアート1949年12月号に掲載されていた1949年のライカ型国産カメラを紹介しました。
その中にベスト判フィルムと135フィルムを切り替えて使える村上商会のケンコー35カメラがあったのを覚えている方はおられるでしょうか。
下はその時の物を部分的に切り取った画像です
そのカメラ部分です。
この他にないか探しましたら、ARS刊行CAMERA誌1949年2月号に下のような広告がありました。
カメラの画像自体は同じ物をつかっているように見え、レンズはニッコールということですが、ネーム部分はおろか絞りや距離を示す数字も見られず、もし、ニッコールならニコンI型付属の物と同じ光学系だと想像できるのですが、これが本当にニッコールなのかは分かりませんでした。
さて、上の広告を見ますと「新春に颯爽とスタートした」とありますので、1949年2月雑誌発売時期とそれほど変わらない時に発売された?又は発売予定だったのでしょうか?
また、スペックを見ますと当事国産最高の1/700秒フォーカルプレーンシャッター、画面サイズがベスト判時縦40mm横35mm、135フィルム時縦25mm?横35mmと読み取れます。また、シンクロ付きでシャッターに同調とあります。
画像を見ますと、高さがあり、確かにベスト判にも対応していそうで、光軸上にファインダーがあり、距離計の窓が正面から見て左でニコンやコンタックスと同様になっています。しかし、シャッターボタンがどこにあるか分かりませんが、もし正面から見て中央右よりの突起部としたら、なんだか見た目では裏焼きっぽくも感じます。
情報が少なく、謎のカメラですが、このカメラの詳細をご存知の方居られないでしょうか?
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コメント
MARUOさん、こんばんは。
村上商会のKenko 35ですが、文字通り幻のカメラですね。
現在に至るまで現物が確認されておらず、写真もご紹介の広告用の1枚しか確認されていないようです。
ここまで情報が無いのは試作をある程度進めて発売計画まで立てて、広告を掲載したものの発売には至らなかった可能性が高いと思います。
極少数でも販売されていたら、あるいは市販されなかったとしても数台でも試作品が完成していたら1台位は残って何らかの資料なり情報なりとして残っているでしょうね。
試作品自体も実際どこまで完成していたのかも不明です。
ベスト判か35mm判専用で計画していたら発売まで行けたかもしれませんが、兼用型だったために結局中途半端になり、技術的な面を仮にクリアーしていたとしても販売を諦めたのかもしれません。下記に少し検討して見ましたが、機構や実用性、コスト面、市場性などを考えると販売に至らなかったとしても不思議ではありません。
情報が1949年当時に数誌に掲載された広告の1枚の写真と大まかな仕様しかないので、これから推定するしかありませんね。しかし色々と疑問だらけです。
付いているレンズも刻印や表示も見当たらず、前面のレンズも見えませんからダミー的な試作品かもしれませんね。
(1)35mmフィルムは専用フィルムマガジンに装填して使用?
127(ベスト判)フィルム(裏紙付ロールフィルム)35×40mm 14枚撮り、135(35mm判)フィルム 35×25mm 18枚撮りの兼用となっていますが、35mm判が18枚撮りとはどういうことでしょう。
通常のパトローネ入り35mmフィルムなら(最大)36枚撮りでないとおかしいですね。
このケンコー35は、径が35mmパトローネより細いベスト判位までの径のフィルムしか入らないのではないか、それで35mm(ライカ)判のフィルムは、専用のフィルムマガジンに18枚相当の長さに切って装填して使うものではなかったかと推定します。
(2)何故に35×40mmと35×25mmの変則フォーマット採用?
ベスト判は35×40mmの縦位置で、35mm判は35×25mmの横位置で撮影のはずです。そのためにファインダー光学系は縦と横位置兼用の正方形に近い比率となっているようです。
いずれのフォーマットでも画面横幅は35mmと同じですから巻き上げやコマ数計の機構の共通化の上で有利でしょう。だから変則フォーマットにしたのではないかと考えます。
(3)ベスト判と35mm判をどうやって切り替えていたのか?
このケンコー35以前にローライ二眼レフ用に35mmフィルム使用を可能にするためのローライキンと呼ばれる変換アダプターのセットもありました。ケンコー35が35mmフィルムを使用する場合に何らかのアダプターが用意されていたものと思います。少なくとも35mmフィルム用の巻き取りスプールは別途必要でしょう。あとベスト判用の35×40mmに対応したフィルムゲートの開口部をどのようにして35mm判の35×25mm対応のガイドレール付開口にしていたかです。
ケンコー35はフォーカルプレーンシャッター機ですからフィルムゲートの直ぐ前にはシャッター幕があるはずです。ローライキンのようなガイドレール付フィルムゲートのアガプターを装着するのは難しいでしょうね。ボデイ側に何らかの仕掛けを組み込んでいた可能性もありますが、フィルム圧板の切り替えも含めてどうしていたかですね。
裏蓋はコンタックスやS型ニコンのように底蓋と一体型になった着脱式のように見えますので専用の裏蓋が用意されていたかアダプタ装着式の可能性もあります。
35mmフィルム使用の場合は、おそらくフィルムのパーフォレーションを利用するスプロケットは使用されていなかったように思えます。コマ間隔の不正確さを補う面からも撮影画面の横幅がライカ判の36mmではなく35mmにして余裕を持たせたのかもしれません。
又、35mmフィルム使用時は撮影後に巻き戻しが必要(ベスト判では不要)ですが、これ用の巻き戻しノブ等がボディ側の上面端に着いているようにも見えますね
(4)シャッターダイヤル位置の謎
ケンコー35の広告の写真では、巻き上げノブとシャッタボタンと思しきものが向かって右側に付いていますね。これは通常のカメラと逆です。これはMARUOさんも指摘されているように写真が裏焼きになっている可能性がありますね。
しかし裏焼きになっていたとしても変わらないのが、巻き上げノブやシャッターボタンと反対側にあるシャッターダイヤル位置です。横走行フォーカルプレンシャッター機とすれば、ちょっと理解できないところです。
シャッターダイヤルは回転ドラム軸の上にある一軸回転式のように思えますが、ギヤ列の連動等があるので普通は巻き上げ軸の近くにあります。何故にこんなに離れた位置にあるのでしょうね。これが最大の謎です。何か独特な機構を持ったフォーカルプレンシャッターなのかもしれません。
いずれにしろ外国製を含めた他のカメラを模倣することもなく、独自性とユニークさを持ったカメラであったろうことは認めます。それが逆に仇になったのかもしれませんが。
投稿: MARK12 | 2009年9月25日 (金) 22時29分
MARK12さん、こんにちは。
多方面からの考察ありがとうございます。
画像のカメラはダミーだと思うのですが、装着レンズも無く、試作品が完成していない段階でのダミーを広告に載せ、その段階で発売をにおわせる広告を出す意図は何だったのでしょう?株価操作?ちょっと想像がつきません。、何にせよ、広告掲載から半年以上あとのフォトアートへのデータ掲載は、発売を目指していた形跡ありと考えたいです。おっしゃるようにユニークなカメラでしたので、出ていれば歴史的カメラの1台となりうったのではないでしょうか。
投稿: MARU0 | 2009年9月25日 (金) 23時08分